detail
- 所在地
- 高山村
- 家族構成
- 夫婦+猫
- 延床面積
- 173.90㎡(52.60坪)
- 施工面積
- 77.00 ㎡(23.29坪)
- Q値
- 6.15W/㎡K → 1.11W/㎡K
- Ua値
- 2.09W/㎡K → 0.26W/㎡K
- 暖房負荷
- 376.5W/㎡K → 51.6kwh/㎡
- 冷房負荷
- 14.3W/㎡K → 8.0kwh/㎡
- 冷暖房
- エアコン+FFストーブ
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軽やかに“現在”を楽しむ。 山間の旧家を「エリアリノベーション」した快適ライフ
長野市街地から車で数十分、緑豊かな風景が広がる高山村に建つ「ゆったり庵」。
もとは大きな農家の母屋だった平屋の建物を、大阪から移住したKさん夫妻が取得。延床面積が50坪超と、ふたりで生活するには広すぎる家のため、必要なスペースのみ断熱・耐震改修を行い、それ以外は化粧直しにとどめる“エリアリノベーション ”を実施しました。
長野市出身のKさん。大手企業の管理職として全国を転勤しながら、いつしか「自然の中で働く」ことに気持ちが傾いていったそう。定年を前に、長野県の就農支援制度を活用して果樹農家に転身。栽培技術を教えてくれた農家さんの紹介で、高山村に自身の果樹園を構えました。
「果樹園のそばに作業スペースとして納屋を借りていたのですが、同じ敷地にある母屋も空き家になってしまうと聞いて。それまでは長野市の自宅から通っていましたが、思いきって母屋を改修して住みたい、と家主さんに相談したんです」
歴史のある家と庭を受け継いでくれるなら、と家主さんも改修を快諾。 Kさんのご兄弟がしなのいえ工房のスタッフということで「冬暖かく、夏が涼しくて暮らしやすければどんな形でもいい、とおまかせ(笑)」。こうして2023年夏に始まったリノベーション工事は、まずインスペクション(既存住宅状況調査)を経て、断熱性能向上と耐震補強、夫妻が心地よく過ごせる空間づくりを軸に進められていきました。
住まい手のライフスタイルを読み解き 暮らし心地を根本から変えるリノベーション
「平屋の大きな建物ですから、二人暮らしでは使わない部屋もたくさんあって。お掃除が大変だろうし、丸ごと改修したらすごくお金がかかるでしょう? そしたら、しなのいえ工房さんが“二人が住む部分だけ工事をして、あとは空き部屋にしておいていいんじゃないですか”って。そんな柔軟な考え方もあるのかーって、とても驚きました」と奥様。
しなのいえ工房のリノベーションでは、住み手のライフスタイルと予算に合わせて、改修の優先順位を建築士が検討します。今回は古い木造家屋の中に、暑さ寒さを気にせず暮らせる「高断熱・高気密空間」をつくることで、コストを抑えながら高性能な住まいを実現しました。
もともと玄関を中心に部屋が東西に別れる間取りだったため、建物の東側半分を「断熱等級6」相当の改修を施した居住空間として、LDKとランドリールームを設けた水まわり、寝室、書斎に。西側の半分は内装を無垢材の床と自然素材の壁紙で化粧直しして、県外で暮らす子ども家族のための夏用ゲストルームや納戸にしました。
工事が終わったのは2024年の年明け。一年で最も寒さの厳しい時期に新居に移ったKさん夫妻でしたが、居住空間の暖かさに驚いたといいます。「日本中あちこち転勤して、マンションも戸建ても住んだけれど、この家がいちばん暖かいです。コタツが必要ないし、お風呂まで同じ室温だから“寒くてイヤだな~”って感じることがなくなりました」と奥様。
念のためFFストーブも設置しましたが、ほぼエアコンだけでひと冬を過ごせたそう。「光熱費が大きく下がりましたし、室温が一定なので体が楽ですね」とKさん。断熱の効果を家計と健康面で実感しているお二人です。
いつかは違う暮らし方になっても。 リセール・バリューまで考えた高品質リノベーション
もとは二間続きのお座敷と縁側だったLDKは、天井から膝の高さまでとった大きなFIX窓と、ヒノキの床で明るく心地よい空間に大変身。高山村の里山と田園を借景にした広い庭を望むリビングは、時が経つのも忘れるような、文字通りの「ゆったり庵」です。ここをついの住処にされるのですね、と伺うと、Kさんはにこやかに首を振りました。「果樹園経営は自然が相手で体力勝負の仕事ですから、歳を重ねればいつかは違う場所での暮らしを選ぶかもしれません。もしそうなっても、この家なら“価値のある中古住宅”として評価してもらえるから安心です」。
しなのいえ工房のリノベーションでは、これまで日本の戸建て住宅では追求されてこなかった「リセールバリュー(再販価値)」を大切にしています。改修前のインスペクションによる建物の状態把握と、将来の住宅基準にもかなう断熱性能。そして暮らし心地を最大限に追求した高品質リノベーションで「資産になる住宅」を普及させていこうと取り組んでいるのです。
果樹園経営と並行して、自家用の野菜づくりや趣味の料理、庭仕事を楽しんでいるというKさん夫妻。今やりたいこと、熱中できることをとことん楽しむ二人を、頼もしく優しく包む「ゆったり庵」なのでした。